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不動産商品企画 まちづくり(1)商品としての建築 - 社会と調和する商品建築 ー | COCOCHI DESIGNS ココチデザイン

更新日:2020年12月8日


不動産 商品企画 まちづくり1 | living
修景の街 モデルハウス デザイン | リビング

建築家や建築デザイナーにとっては「作品」、企業や不動産デベロッパーにとっては「商品」という領域の建築や店舗がこの世には多く存在します。 私の独立後のデビュー作は、9戸の戸建住宅開発の小規模なまちづくりでしたが、これらも不動産デベロッパーにとっては「商品」と呼ばれるものです。 建築家にとっては既製品を使うこと、技術のそれほど高くない職人を使うことにはかなり抵抗があるものです。 実は私も当初はかなり違和感がありました。 戸建住宅開発に際してどのような商品が適切なのか、商品化するまでに「商品企画」と言って、不動産デベロッパーや広告代理店、販売会社と議論するのですが、クライアントである不動産デベロッパーは、良い商品をいかにして売れるようにするか知恵を絞り、広告代理店は私たちデザイナーが考えた専門的なデザインコンセプトを一般のお客様へわかりやすく噛み砕きながら表現して、物件や大きくは不動産デベロッパーのブランディングとしてより良いイメージを構築していきます。 不動産広告と言う領域はかなり特殊で、不動産専門の広告代理店も存在する程で、当然、市場調査をして商品の内容や価格帯からターゲットとなるお客様の層を設定します。 デベロッパーが考える商品もマンネリ化してしまうので、「商品企画」を広告代理店に丸投げしている会社もある程で、結局は売れるか売れないかで判断している部分もあります。 また、住宅産業はクレーム産業とも呼ばれており、事業主である不動産デベロッパーは竣工後の補修やメンテナンスを極力無くしたいと考えていて、無駄なコストを無くすことも考えれば行き着くところは既製品を多様する事になるのです。 住宅開発を手がけるデベロッパーや工務店は物件の数が多いので、既製品の仕入れ値がかなり格安で、私も当初はその仕入れ値を聞いてかなり驚いたものです。 メーカーから安く仕入れられてメーカー保証がある、品質にも問題はないので、それはそれで有りな世界と認めざるを得ません。 こだわりたければ注文住宅として設計する際にこだわれば良いと考える事にしました。 デビュー作となった9戸の小規模なまちづくりは、「修景の街」とネーミングしたコンセプトを作りましたが、業界のカテゴリーとしては建売住宅や売建住宅(建築条件付)と呼ばれるものかも知れません。 ただ、「修景の街」では一戸のモデルハウスを作って全面にコンセプトを押し出した広告を打ち、賛同してくださるお客様に販売する戸建コーポラティブハウスのような手法として「商品化」するのが望ましいと考えていたので、事業主の取り巻きとの「商品企画」の会議では納得してもらうのに大変苦労しました。 私たちはありきたりな建売住宅と同類で扱われたく無かったので「コンセプト住宅」と呼ぶようにしていました。 ↓ コーポラティブハウス https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%9D%E3%83%A9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9 クライアントである不動産デベロッパーS社にとって、こちらが提案したものの面白さはわかるものの、新しい試みであるので世間に受け入れられるかどうかわかりません。 計画地のエリア的にも提案したテイストものは存在しません。つまり、市場調査してもデータがないので売れるという裏付けがないのです。 事業主は外部へ販売委託していたので、販売会社に計画のコンセプトを説明するのですが、バナナの叩き売りのようなノリでありきたりな建売住宅を売ってきた販売会社には理解不能な世界だったようで、「こんなものが売れる訳がない!」とかなり詰め寄られました。 まあ、マーケティング調査して比較対象になる物件もありませんし、売れる根拠がないのでそう言われても仕方ありません。 ただ、私は計画地に何度も足を運んで、こちらの世界観をしっかり伝えればイケると踏んで提案している訳で、建築家未満で建売住宅以上の領域を望むお客様がこのエリアには存在するはずです。 事業主S社の住宅開発事業部の部長さんと何度も議論を重ね、部長さんから「9戸全て売れるか想像ができないけど、新しい提案にチャレンジしてみよう!」と言って社内調整してくださり、ひとまずモデルハウスを一戸建ててくれる事になりました。 結果的に、このプロジェクトは好評で、関西のいくつかのメディアで取り上げてくれた事もあり、9戸早期完売の成功を収める事が出来ました。


不動産 商品企画 まちづくり 2 | facade
修景の街 モデルハウス デザイン | 外観

建築家の「作品」はB to Cであり、企業や不動産デベロッパーの「商品」はB to B to Cである。行き着くところはCであるエンドユーザーなので、アプローチは異なっても、エンドユーザーであるお客様のためを思う気持ちに変わりはないと私は考えています。 冒頭で既製品を使う使わないという事を書きましたが、建築家未満で建売住宅以上のお客様にとっては、程良い主張(調和)のある世界観が重要で、決してフルオーダーを望んでいる訳ではありませんので、デザイン技術があれば既製品であっても空間コーディネートは出来るものなので、それはそれで良いのではないでしょうか。 私が手がけてきた「コンセプト住宅」には、結果的に建築家未満で建売住宅以上を望むお客様が世の中に多くいらっしゃる事が証明出来たと思いますし、こだわりのコンセプトの大切なメッセージに賛同してくださるお客様は、ほとんどがクリエイティブな方や意識高い系のお客様で、皆さん、良いコミュニティーが自然と形成されています。 一つ一つご購入されるお客様と住戸プランや内外装のコーディネート提案を行って、全体が調和するように作り込んでいき、まちが完成するのに結構な時間を要しますが、楽しいプロセスです。 「商品」であっても、私たちにとっては手塩にかけた可愛い「作品」だと自信を持って言えます。 デビュー作の「修景の街」というネーミングは設計コンセプトではありましたが、広告表現的にも面白いと言う事で、そのまま物件名として採用されました。 ここに暮らす方々、周辺に暮らす方々が「修景の街」と呼んで愛着を持って生活しています。 また、このプロジェクトでは、とても嬉しい出来事がありました。 9区画の計画地は郊外にあったのです、隣接するお屋敷にお住まいのご近所さんが、モデルハウス完成時に何度もお越しになり、「こんなにステキなコンセプトと住宅を作ってくれてありがとう!」と言う感謝の言葉を掛けてくださり、その後、このご近所さんとはお付き合いが続いていて、パリ在住の銅版画家の娘さんとお仕事でご一緒したり、私がまちおこしで活動していた京都・南山城村に遊びに来てくださり、村の廃校を工房にして活動する家具作家さんにご自宅の家具をご依頼くださるなど、当初全く予想しなかったお付き合いも生まれました。 地元自治会の方からは「感じの良い人たちが住んでくれて嬉しい」と言っていただき、計画地が周辺景観と一体となるコンセプトで、地域コミュニティーも形成される、デザイナーとしてこんなに嬉しい事はありません。 建売住宅ではないコンセプト住宅、「商品」であっても社会に良い影響を与える事ができるのです。 「修景の街」本当に思い出深いデビュー作となりました。

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